未来探し
「るーかーにいっ!」
お誕生日おめでとーっ! と玄関から入るなり、勢い良く飛び掛ってくる少年。体勢を崩しながらも、早いな、もうこんなに大きくなっちゃって。と言いながら、飛び掛ってきた少年、羽瑠くんを抱きかかえる。
羽瑠は「五歳だもーん!」とにこにこ笑いながら、流架の首の後ろに手を回した。
玄関から見えるのは、羽瑠の靴を揃えて「ちわー」と言いながら部屋に入ってくる保護者の翼の姿。安藤家の家と流架の住んでいるマンションが近いため、翼たちはよく遊びに来る。
学園を卒業して一人暮らしを始めたけど、慣れなくて不便な部分があって大変だった。けど、近くに知り合いの先輩の家がある、と思うとすごく安心できるものだ。だからこの場所を選んだのだし。
羽瑠の頭を「よしよし」と撫でながら、流架は翼からラッピングされた箱を貰った。
「ありがと。……今日は奥さんいないの?」
「美咲は、えっと、……そろそろ来るよ」
「ママはね! 流架にいの為に花束買ってくるんだってー!」
「あっ! 羽瑠! ……ごめん流架ぴょん。内緒だったはずなのになぁ……」
「いいって。……ていうか、プレゼント貰ったから花束なんていいのに」
こうやって祝ってもらえただけで俺は嬉しいのに、と言うと翼は微笑した。
そして、羽瑠に「パパと流架にい大事なお話があるから、羽瑠はちょっと遊んでて」と言って隣の部屋を指差しながら頭を撫でた。
羽瑠は元気良く頷いて、部屋にあるソファにダイブして、鞄に入っていた白紙の紙とクレヨンを取り出す。それを確認すると、翼は苦笑しながら頭をかいた。
「……何?」
「いや、その……。余計なお節介なんだけど。その……」
「……いい加減、結婚しろって?」
「うん……ほら、蜜柑たちは結婚して幸せそうだしさ。あとは蛍姉さんと流架ぴょんじゃん?」
「今だって幸せだよ? 充分」
わかってる、みんなに心配かけてることくらい。
学園に滞在している時点からの恋人同士が何年経っても結婚しないんだから、みんな心配するだろう。現に自分だって心配すると思う。
けど、今が幸せだっていうことは嘘じゃない。
動物介護学校に通いながら楽しく生活している。一人暮らしでもこうやって遊びに来てくれている人がいて。
蛍とは付き合っているけど、『結婚』という枠にとらわれなくてもいいんじゃないか。
そう思いながら、翼の返事に言葉を濁していると、絵を描いていた羽瑠が急に立ち上がった。そして玄関の前に鼻歌交じりで立ち、「蜜柑ー、なっつめにいー、蛍ねえー!」と歌っている。
ちらりと窓の外を除くと三人が仲良く歩いているのが見えた。
「……そりゃあの3人も来ますよね。……急にゴメンな。幸せならそれでいーけど」
「うん、でも考えてみるよ。……3人来たとこだし、楽しもうよ」
そう言って揃って玄関に向かう。
ガチャ、とタイミングよくドアが開き、羽瑠が棗に駆けよる。そんな羽瑠の頭を撫でながら、「翼たちも来てたんだ」と棗は呟いた。
そうしてる間に羽瑠は棗から離れて、遠く見える美咲に「ママー!」と叫びながら手を振っている。
これで全員集合やな! と佐倉が微笑みながら、プレゼントらしきものを差し出す。小さな袋に包まれたものにカードが添えられている。
「……わざわざありがとう。棗も佐倉も久しぶりだね、」
「だな。……誕生日おめでとう、流架」
その後ろには美咲が立っていて、羽瑠と手を繋いでいる。流架は美咲から綺麗な花束を受け取り、「おめでと、流架ぴょん」と言われて照れながらもお礼を告げた。
すると、蛍が流架の前に来て、小さい小包を顔の前に出した。
高級そうな袋に包まれたプレゼントはネックレスかブレスレットだろうと予想がつく。蛍が「おめでとう、流架」と優しく微笑む姿を見て、僕はそれだけで充分だ、と思った。
そんな姿を見て、羽瑠はにこにこしながら、両手を広げ後ろから流架に抱きついた。
「ねー、蛍ねえと流架にい。……二人は結婚しないの?」
「……えっ?」
「そうねぇ、今年中にはするんじゃないの?……ね、流架?」
真面目に呟きながらも少し照れくさそうな感じの蛍を見て、流架は唖然としながら慌てて頷いた。急すぎてどう返事していいかわからなかった。
けど、そんな事を言ってくれただけで、「生まれてきて良かった」と思えてしまう。
__きっと探していた未来はすぐ傍に、
◇
流架ぴょん! お誕生日おめでとうっっ! 貴方が生まれてきたことに本当に感謝します!
書きたい人物をたくさんかけて良かったです(笑)ちなみに羽瑠(ハル)くんです。
2010/03/16 up...
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