花のかんむり
01
02
03
04
05
03 陽気な姫と怪しい男
「……やっぱり似てるなー」
いきなりの背後からの声に驚き、目を見開きながら後ろを向く。そこに立っていたのは綺麗な顔立ちをしていて金髪で、とにかくとても派手な人だった。似てるなー、と言われたからには自分か自分の周りの人と知り合いなのか、と首をかしげる。
金髪の男性は髪の毛をふわっと耳に掛ける。その一つ一つの動作が色っぽいというか大人な感じで、普段見慣れていない光景である蜜柑はじっくりと魅入っていた。
「そんなに見つめられると照れちゃうなぁ、蜜柑姫」
「いや、見つめてたわけやのうて……その、綺麗な人やなあと」
綺麗、というのはお世辞でもなんでもなくて蜜柑が本当に思ったことだった。身近にいる大人といえば父上か母上で、綺麗ではあるがこんなに色っぽくない。
知らない人に急に話しかけられたのにも関わらず、蜜柑は持ち前の明るさと人懐っこさで笑顔で対応している。しかもすでに親しい雰囲気で。蜜柑が微笑むたびに男性も微笑み、蜜柑が幸せそうに目を細めると男性も目を細める。
「そういや、名前聞いとらんかった。……何ていうんですか?」
「蜜柑姫を守るナイト…なんてね。……僕は鳴海。気軽に呼んでくれちゃって構わないよ」
「うう、……そんじゃ鳴海先生でええ? うち学校行っとらんから……先生って呼ぶの憧れてて」
「先生か。変な気もするけど姫が呼びたいなら許可しちゃう」
語尾にハートがつきそうな勢いで鳴海は微笑む。今日一日で二人の人と仲良くなれた、と蜜柑は嬉しそうに笑う。風にドレスをなびかせながら。
そして、そろそろ帰ろうかと歩こうとすると、手を強く握られた。
「……へ?」
「まだ行っちゃ駄目だよ、蜜柑姫。……僕は貴女のお母様に、女王様に逢いたいのだから」
*
「……柚香さま! 蜜柑姫がまた脱走したようです! 柚香さま?」
「ああルカぴょん、馬鹿娘脱走の事はわかってるわ」
「何、されてるんですか?」
「さっき城下町に住む天才的な技術を持つ子に、バカン砲を作ってもらったの」
柚香さま、と呼ばれた女性は煌びやかなドレスを身にまとい、そのドレスに似合わぬ大砲を手に装備している。それを見るルカぴょんと呼ばれた少年は、呆れた目で「姫はどうします?」と尋ねている。少年の着る服は高価といえば高価で綺麗だが、発する言葉や柚香に対する態度でこの城で働いている者だと予想がつく。
「放っておいていいわよ」と柚香に言われた流架は、頭を下げ礼をして歩いていった。
蜜柑の部屋は窓が開いていてカーテンが揺らめいている。流架はその部屋の様子に小さくため息をつき、蜜柑が帰ってきても平気なように靴底を拭く雑巾やらを準備している。
そして鍵を閉めずに窓を閉め、蜜柑の部屋を後にした。
2010/05/30 up...
BACK
[PAGETOP]
NEXT
TEMPLATE PEEWEE